オットー大帝の審判
●こちらの大きな2つの作品は、ディーリック・バウツと云う人の作品です。ルーバンと云う街のお抱え画家だったんですね。裁判所のような建物を建てるときにそれに見合った作品を描いてくれていわれて描いたのがこの絵なんですね。画題は「オットー大帝の審判」と云うものです。左のほうからストーリーになっていまして、貴婦人がオットー大帝に何か言っていますね。貴婦人はオットー大帝のお后さまですが、「あなたの部下の伯爵が私に色目を使っているわよ」と告げ口されたので、その伯爵が死刑になります。引き立てられていきまして首を切られる訳です。1つの画面の中にお話が出ているわけです。ところが、この人は、本当は無実で、お后様がラブレターを書いたのですが無視されて、告げ口をして処刑させるわけです。公爵の奥様は切られた首を持って非常に悲しそうな顔をしています。
●続きは右側のパネルになります。これは真実を報告しているところです。「私の夫は無実です」と。鉄の焼けた棒を左手に持っていますが、それを握っていても真実を言う人はやけどをしないですね。オットー大帝はそれを聞いて「オットー」と言ったとか。親父ギュグですがいつも言うのですね。大帝の顔は無表情ですが、手の感じが驚いた様子を表しています。そうだったのかと真実がわかりまして、背景の奥を見ますと、お后様が火あぶりになっている絵になっています。つまりオットー大帝は公正を重んじる人物だったといわれる伝説を絵に描いているわけです。そして大帝の座っている足元に「犬」がいますが、このような絵に描かれている犬と云うのは、従順さを表すシンボルとして描かれている事が多いのです。
●このように1つの絵の中に物語が流れているには、当時はこうゆうブリュージュのような大きな街では、市民の人たちは「宗教歴史劇」みたいなものを楽しんでいたんですね。この画面自体が、演劇・絵本のようになっています。この作品はバウツの死ぬ前の作品で、右側は彼の作品ですが、左側は完成する前に亡くなっています。弟子が完成させました。
●そちらにあります保存状態が非常に悪い作品ですが、キャンバスに描かれた作品で、こうゆう技法で描かれた作品としては最も古いものです。やはりバウツの作品です。
●ここがロヒエール・バイデル・ワンデルウエルデンの作品です。この人はブリュッセルのお抱え画家です。例えばこのポートレートは、皆様が行かれるブルージュを治めたブルゴーニュ公爵フィリップ善良公の非嫡子です。首飾りを見てもらいますと羊ですね。これはトマソンローズとフランス語で言いますが、金羊毛騎士団のマークです。これが後のハプスブルグ家の紋章となります。
●このパネルは作者不詳ですが、非常に古くて1400年頃の作品です。家具の一部として接着剤で貼り付けられていたのが発見されました。